売上がない課税期間の消費税の申告(還付申告)
事業開始の第1期目や、事業終了の最終年度など、売上がない課税期間の消費税の申告ですが、還付申告を提出できる場合があります。
例えば、事業は開始して設備投資や商品仕入れがあるが、売上がない場合。
又は、事業を廃止する年度で、固定費や事業廃止に係る費用はあるが、売上がない場合です。
売上がない課税期間で消費税の申告(還付申告)をする場合には、一定の条件を満たす必要があります。
前提として課税事業者選択届出書の提出や、基準期間の課税売上高判定などで、その課税期間が消費税の納税義務者である必要があります。
また、簡易課税制度の適用がないとします。
売上がゼロの場合、課税売上割合がゼロとみなし、課税売上割合が95%未満の個別対応方式又は一括比例配分方式により計算することとなります。
(1) 棚卸資産の取得や倉庫の建築費→課税売上対応の課税仕入れ→全額控除(控除不足還付税額)
(2) 本社の建築費や車両の取得、事業終了に係る諸費用→預金受取利息が少しでもあれば共通対応仕入れ→課税売上割合がゼロなので、個別対応方式でも一括比例配分方式でも控除できない可能性があります。
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(※)R3.11.26に国税庁の質疑応答で「課税売上割合ゼロは課税売上割合95%未満に該当せず全額控除」という従来の認識から変更されました。
国税庁HP【課税売上割合が0の場合の仕入控除税額の計算方法】より
「課税期間中の売上(資産の譲渡等)がなく、課税売上割合の計算上の分母及び分子がともに0となる場合、課税売上割合は0%(95%未満)として取り扱われます。
したがって、当課税期間中の課税仕入れに係る仕入控除税額の計算は、消費税法第30条第2項の規定が適用され、個別対応方式又は一括比例配分方式により行うことになります。」
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消費税法
第四十六条(還付を受けるための申告)
事業者(免税事業者を除く。)は、その課税期間分の消費税につき控除不足還付税額又は中間納付還付税額がある場合には、確定申告書を提出すべき義務がない場合においても、仕入れに係る消費税額の控除不足の還付又は中間納付額の控除不足の還付の規定による還付を受けるため、一定の事項を記載した申告書を税務署長に提出することができる。
(一部省略)
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消費税基本通達
11-2-12(課税資産の譲渡等にのみ要するものの意義)
法30条第2項第1号《個別対応方式による仕入税額控除》に規定する課税資産の譲渡等にのみ要するもの(以下「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」という。)とは、課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいい、例えば、次に掲げるものの課税仕入れ等がこれに該当する。
なお、当該課税仕入れ等を行った課税期間において当該課税仕入れ等に対応する課税資産の譲渡等があったかどうかは問わないことに留意する。
(一部省略)
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課税売上がゼロのため、控除不足還付税額が出ないという場合、初年度又は最終年度に課税売上を建てるという考えもありますが、あまりにも意図的で合理性が欠ける場合は税務署に否認される可能性もあります。また、消費税の還付申告の場合、税額計算書だけでなく、還付に至った過程等を記入添付しなければなりません。
また、近年輸出免税制度を使った消費税の不正還付事件もあるので、国税庁が還付申告については従来より慎重に確認し、場合によっては還付を保留し実地調査をすることもあるとしています。
(2022年11月記載)
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